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ギターリペアの話 第10話

 僕は専門学校入学してちょうど半年くらいの時に奇跡的に楽器屋の専属リペアマンになりました。

これは腕がよかったからとかそんなんじゃなくて、押しが強かったから雇ってもらえたって感じでした。

入学半年というと何ができる訳でもなく、店頭の楽器を磨いたり簡単なメンテをしたりということをするもんだと思ってたんですが、いきなり本番の修理でした。店側も僕が入ったことによりギターのリペアというサービスを全面的に出すといった無茶ぶり具合でした。

当時僕は学校の中では出来の悪い生徒で、スルーネックのベース製作の課題があまりにも興味がなくて、なんでこんなもん作らないといけないんだ!ってな具合でサボりまくってたなあ…。

今考えると本当にダメなやつだ…。なんてもったいないことしてたんだろう…。

そんな僕が店でリペアするってことになったもんだから先生なんかはびっくりしてました。

なんでそんな無茶なことしたんだって怒られたのを憶えてます。

入学して楽器の製作の授業受けてて、自分はリペアの勉強したいのになんで製作しなきゃいけないんだろうという疑問と葛藤の中でこのままではいけないっていう危機感だけあって、楽器のリペアを習得するにはこれしかないというのが僕の考えでした。

『ぼくは楽器修理の勉強する学校に行って楽器の修理の勉強してます!』ってのを全力で前に出してアピールしてました。高い授業料払ってるのでこのくらいはいいだろうとおもいます(笑

本当に必死で絶望的な求人情報と、この業界の狭さを知ってしまうと自分で動かないとダメだったのは間違いなくて、勝手に動きまくった結果で楽器屋に入ることができました。

周りの同級生なんかは自分はまだまだ未熟だから…みたいなことを卒業まで言ってたかな。未だに言ってる人もいる(笑

間違いなく僕よりできてる人がそんなこと言ってたら僕はどうしようもなく未熟な訳で(笑

このリペアって仕事はやるなら自分でその世界に飛び込まないと本当にできないとおもう。

それは店で働くにしても個人でやっていくにしても。自己アピールってすごく大事だと思います。

できるかできないかはそれからの話なのかなって僕はおもいます。





ギター作ったラジオ屋さん

 これは僕が勝手に考えてることなんですけど、エレキギターがここまで楽器的に扱われるなんて考えてなかったんじゃないかなっておもうんです。

オーケストラと一緒に演奏する時なんかに音が小さいからマイクつけてアコースティックギターなんかを弾いてて、そのマイクが他の音を拾ってしまうからアコースティックギターに内蔵できるピエゾピックアップが開発されて…。なんかそんな感じだったとおもいます。

このへんまではなんか筋道があるなって思うんですが、そのままの流れでいくとすごく性能のいいアコースティックギターの音拾う何かが開発され続けるだけだったはずなんです。


でも空洞のないアコースティックではないソリッドエレキギターっていう今までとは全く新しいものができてしまった。

これってすごい偶然の産物だったんじゃないかなっておもいます。

今まではヴァイオリンの流れでアコースティックギターもそうだったんですが、木の鳴りで音だしてたものが全く無視で大きな音だせる。すごく便利なものに思えますが当時の人たちからしたら木の板きれに音を拾うマイクついたものを欲しがるとはおもえません。興味は持つでしょうが抵抗はあったと思うんです。

フェンダーって楽器を作る前はラジオの修理屋さんだったってのがまたなんともおもしろくて、そこにアンプ修理にきた人とたまたま新しいギターの開発するってことになって今のテレキャスターができたわけなんですが、このへんで楽器の今までの当たり前が吹っ飛んだんだとおもいます。

まず、ラジオ屋さんのおじさんが楽器の製作の業界に飛び込んできた。当時の楽器職人はどう思ってたのか聞いてみたい(笑

ヴァイオリン職人とかアコースティックギター職人が木の鳴りを追求してシノギを削ってる中にラジオ屋さんのおっちゃんが参入してきたわけですよ!

このことによって現在エレキギターは凄く身近なものになったと思います。

このラジオ屋のおっちゃんが楽器というものを電化製品に近くした。誰でも大きな音で演奏できて音のバリエーションも多彩な便利アイテムへと変化させました。

これは僕の想像なんですが、この時エレキギターで木の鳴りがどうこう言われるなんてラジオ屋さんは想像もしてなかったんじゃないかな。そこまで深く考えられるなんてね。そこはやはり楽器を演奏する人の楽器への追求心のすごさなんでしょう。

ネックは反ったら交換すればいいって最初は考えてたってのを知った時はびっくりしました。パーツの一つとしてネックを見ていたってのもラジオ屋さんっぽくてなんかしっくりきます。『壊れたら交換すりゃいいじゃん!』みたいな。

器用なおっちゃんの『何でもやったるで魂』みたいなものが切っ掛けだったんだろうなぁエレキギターって…。


ヴィンテージギターについて考える

 ギターってワインみたいに昔の有名なメーカーのものが凄く価値があったりします。属に言うヴィンテージギターってやつですね。これは本当にいろんな考え方があって、よく言われてるのが年数が経って木の鳴りが良くなってるとか、電気系のパーツが劣化してなんとも言えない丸い甘い音になってるとか…。

いろいろヴィンテージギターには音のイメージがあると思います。

あと、見た目。年数が経っていたり使い込まれた感じや塗装の劣化感はなんとも言えないオーラを感じてしまいます。ただし!良品に限る!

確かに年数が経つことによって新品のギターとは違うところはかなりでてくると思います。

これはメーカー関係なしで年数が経つと音は良くも悪くも変わるってことです。

この変化にいろんな付加価値やオカルト的な都市伝説みたいな話まで加わってヴィンテージギターってのはすごい価値のあるものってことになってます。

僕、こういう話は、団塊の世代ぐらいの人たちが広めたんじゃないかと思ってます。

gibsonやfenderが高価でgreco買ったって人たちが憧れをそのまま若い世代に伝えて話がだんだん大きくなっていたんではないかとちょっとおもってます。

なんかそんな話をよくそういう年代の人からきいたので…。

ギターといえばgibsonやfender!アメリカ製のやつがいい!!ってのはその頃からの言い伝え的なものもあるよなって…。確かにいまでも高価だしね

なんでヴィンテージギターが高いのかっていうと理由は様々で、本数が少ないとか、いろいろです。

古いから高いってのもあるかな。

当時は人気が全く人気がなくて生産数がめちゃくちゃ少なかったためにプレミアがついている。

なんか楽器のくせに音の話ってあんまりないんですよね。コレクターとプレイヤーの視点がごちゃまぜに絡み合ってヴィンテージギターの評価はよくわからないものになっているように思います。

高いギターだからいいとは限らない。古いからいいとは限らない。自分が気に入っているかどうかってことが一番だとおもいます。



ぼくはヴィンテージギターをどう思っているかというと、嫌いじゃありません。国産のヴィンテージギターなんか大好物な人間です。国産のめちゃくちゃ古いのって、わけのわからんスイッチがついてたり、海外文化のギターをどうやってつくってやろうか?みたいな必死な感じがするとこが大好きです。



『難しい修理なのでプロの人に依頼しましょう。』

 なんかね、いつもギターのリペアしてて思うのは、すごく孤独なんですね。

仕事として請け負う限り絶対に失敗なんて許されないし、中途半端なことは絶対できない。

できませんでしたなんて言えないし言いたくないってのもある。

専門学校在学中から僕は店の専属リペアマンってことで仕事させてもらってて、今考えると凄いことだなって…。

やったことない修理とか改造がわんさか来て、それに四苦八苦しながらなんとかこなしていたとおもいます。

よくこんな奴雇ってくれたわ(笑

在学中は先生のアドバイスをあてにしたり同級生に相談できてたんだけど、卒業してしまうとそうもいかず、そこからが本当に不安と戦う毎日で、本当にひたすら勉強しました。

これね、勉強って言ってらちょっとおかしいんですけど、結局はどれだけギターのこと知ってるかなんですよ。

修理ができるってのは最前提としてないといけないわけだし、お客さんのギターに傷入れるなんて絶対にやってはいけないこと。あとは依頼者の好みに合ったセッティングをしてあげることが一番大事。

修理とか調整で、ここをいじるとここが変わってみたいな決まりごとみたいなのがいくつかあって、それが頭でわかってっても、いざ楽器を相手にしてもそう教科書通りにはいかないのがギター修理の難しいところで、その楽器のちょうどいいバランンスの設定にするのは本当に感覚なんだとおもいます。自分がいいと思ってもお客さんのプレイスタイルと違ってダメだったり。。

これはすごくたくさんの楽器を触る機会があったから身についたとおもってます。

本当これだけはラッキーだった。

でもこのことがきっかけで店辞めたんだよな(笑

この話はまた今度…

僕は卒業してから相談できる人が周りにいなかったので、あ、でもいたとしてもしてなかったかな…。

ネットで調べたりして傾向なんかを見たりしてた。いろんな修理の仕方がでてきてそれを参考にして修理することっもあって、でもこれは勉強不足って訳じゃないなっておもったんですよ。

見たことない壊れ方してるものや、過去に例の無い改造なんかも。

でも情報を鵜呑みにしてもだめだからそこで自分の修理プランを考える。これが大切!

インターネットって本当便利ですね。

いつもお世話になってます。

いつもネットでそういうこと調べていると必ずと言っていいほど出会う言葉が、『難しい修理なのでプロの人に依頼しましょう。』この言葉を見ると、いつも我にかえるんですよね。





エレキギターってどうなるんだろう?

 ギターの改造っていうとすごくいろいろあって、演奏スタイルに合ったものにする演奏性を上げる改造とか音をガラッと変えてしまう改造とか様々です。

主に演奏の絡んだ改造がほとんどで、その改造方法ってのはおそらくほとんど新しいものってのは出てないです。

ないってわけじゃないんだけどメインストリームになるようなもんがないっていうか…。

ギターってすごくスタンダードが好まれ続けられて、発売当時のものがマイナーチェンジしてるのもあるけど、今も形を変えずに売られてるんですな。

こんなに形を変えないってのは本当にすばらしいものだからこそなんですが、変わらないゆえの飽和状態みたいなものを時々感じてしまう時があって、楽器に触れる機会が多いだけに少し不安な気持ちになります。

僕が思うに、すごく新しいものが出た時の抵抗感みたいなのがあるんですかね?自分もそういう感覚はなくはないんですが、楽器はもっとおもしろくなってもいいとおもってます。

なんていうか、木の鳴りとかももちろんエレキギターの楽しいとこなんだけど、なんかもっとエレキってとこのおもしろい部分の進化がそういう考えですごく遅れてるんじゃないかって思います。

もちろんエフェクターなんかはすごくたくさん種類があって音のバリエーションがあるけど、楽器本体でできる新しい何かってとこの研究みたいなのをもっと考えてほしいなってメーカーさんにおもったり…(笑

新しい電化製品のカタログ見る感じで、おお!すげえ!とか言ってみたいです。

音楽は常に新しいものが出てきて、新しいジャンルがたくさんたくさん生まれてます。

なんか最近音楽番組が全然面白くないしこのままエレキギターが時代遅れの産物になってしまうんじゃないのかなんて一人でヒヤヒヤしながら最近の動向を伺ってるわけです。


別にいまのギターが嫌いって訳じゃないんだけど、もっとなんかないかなってかんがえてます。

これが本当になかなか見つからないんですね。

このエレキギター考えた人は本当にすごいです。

でもなんかまだあるはず!

まだまだ可能性はあると思ってます。

まあ自分の好きなギターで、気に入った音だせるってのが一番いいことだとおもいます。


ちょっと前に、楽器のパーツを瞬間冷凍すると音が変わるという改造方法をネットで見た時は度肝ぬかれました。


でもなんかちがうねんな〜


これで君も楽器フリークスだ!

 音楽してる人、ギタリストベーシストの人と話しをすることが自分はすごく多くて、

自分はリペアしてるので楽器の雑談なんかをよくそういうプレイヤーの人たちとしたりします。

あのギターが欲しいとかライトな話から、もっと込み入った話まで様々で、僕も楽器が好きなんでついつい話が長くなったりで…。

こういう音楽話してる中で面白いなって思うのが音の表現のとこで、人によって言い方が違うなって思うんです。

たとえば、このエレキギターはすごくLOW(低音)が良くでていいとか、またちがう人はこのギューンっって音が好きとか。

『中低音』とか『音の抜け』とかまだまだいっぱいあるけどそんないろんな音を表現する単語を並べまくって楽器話は繰り広げられていくわけです。

この音ってのを言葉に表すっていうのはなんとも曖昧で、人によってはまったくちがうことを言っていたりするんですが、なぜか通じているという不思議な会話。この中低音の抜けって言葉をすごくよく聞いたとおもう。

僕もバンドをしてたし、それなりに楽器について勉強してたからなんとなくはわかるんだけど、

その音のは確かにあるけども、結構みんなばらばらな答えでした。

この曖昧さがすごく僕は好き。

音を言葉にするのは難しいですね。僕もよく中低音って言葉使います。

なんかあの言葉使うとすごく楽器の話してるなっておもうんですよ。(笑


改造の依頼で、有名アーティストのあのギターみたいな音にしてほしいといわれるとすごくわかりやすいんですが、もっと中低音の抜けが良くなりませんか?みたいな注文が一番困ってしまう(笑

曖昧な言葉から本意を聞き取ってなにをしたらいいのか考える。案外そういう人に限って壊れてただけってこともあるんだけどね(笑

ぼくが今までで一番すごいなとおもった音の説明したお客さんがいて、

池に大きい石を落とした時の『ドゥポンッ!』って音みたいな感じ。

言われた時は何言ってるのかさっぱりだったんだけど、その人のベースからは間違いなく『ドゥポンッ!』に近い音が鳴っていた。あのベースは本当にすごかったなあ。

確かにその表現しか無い…。そんな音でした。


専門用語ばっかり使いやがって的ななにかでなんでか自分的には木の鳴りとかミッドローって単語を使いまくる人はなんか胡散臭さを感じてしまいます。


あと最後に、逆に木の鳴りとかミッドローって単語を使いまくるとなんか楽器知ってますオーラがだせます。これは間違いない!これで君も楽器フリークスだ!






ギターをみる視点

 これはギター製作の授業受けて製作始めだして1本目の楽器が完成した時ぐらいに専門学校の同期の人たちと、楽器屋に並んでる大量生産されてる楽器はもう買えないなって話をよくしていたように思います。

製作の授業は楽器を作るわけで、教えられた通りのことをどれだけできてるかで点数つけられて成績がつくわけです。

点数ってのがまた学校って感じだな笑

決められたサイズをきっちり出せているかとかいろいろっるんだけど、一番ピリピリしていたのが木工の仕上げ行程。これってすごく奥が深くて、エレキギターのボディにはすごくいろんな曲線があって、他にもいろいろあるけど、この曲線を意識しはじめると楽器の見方が本当に変わるんです。

そこの加工が難しいってのもあるんだけど、市販の楽器のほとんどがきれいな曲線がでていないことを発見してしまうんです。楽器製作習うまでは10万もする楽器なんだから完璧なものなんだろうとおもってたからそりゃあ驚きでした。普段楽器を弾いてるだけではほとんど意識しないようなところなんだけどね…あと塗装後の磨き上げたときにできるすごく細かな傷とか。

自分の中の常識が崩れた瞬間でもあってギターに対する見方というか視点が変わった瞬間でもありました。

未熟ながらもギター作る人の目線で楽器を見れるようになったってとこでしょうか。

まあそれからというもの楽器屋にいっては高い楽器の加工の粗捜しをしてたな。本当に嫌な奴だ、、

でもこういうことも勉強の一環になってたとおもいます。

この視点で見れてたってことは今思うとしっかり製作やってたんだなって思います。


でもこの『作る人目線』ってのはほんとうに扱いが難しくて、この目線で世に出回ってる楽器を見続けると何もかもがダメなものにしかみえないんですよ。気になりだしたらそりゃあ止まる訳ないし、そんな完璧な楽器がたくさんある訳ないし。

専門学校の同期の人たちも同じ葛藤してたんだろうなあ。

これは製品や作品を製作する時に必要な目線だから、その見方に偏ってしまうのは本当にだめなことだと思います。

楽器をリペアするにしても製作するにしても、技術者目線とプレイヤー目線の両方を維持するってのが一番大事だと僕は思ってます。











ギターリペアマンになりたいひとへ

 よくリペアマンになりたいですとか弟子入りしたいですなんてたまに言われることがあるんだけど、

いつも僕はその道を奨めることは絶対にしない。

嘘でも華やかな業界って言えないってのが僕の本音です。

なんでも挫折するのは当たり前なんだけどやっぱり自分の好きなもので挫折するのはなかなかのすごいショックで、そんな理由とかで僕の行ってた専門学校の同級生たちは入学して1年以内でインフルエンザが流行した学級閉鎖寸前のクラスみたいな人数になってたのを覚えています。

別に厳しい授業ってわけじゃないんだけどだんだん未来に不安になったりしたんだろうな。

だって学校に入ったからといって就職できるわけでもないし、資格をとることもない。下手したらただ楽器のことがちょっと詳しい人になれるだけ。

エリートなんてものもない。

就職案内もそんなこない。あの就職先一覧はもうちょっと学校がんばれよって今になるとちょっと思ってしまうこともあるけど不景気のせいってことにしておこう。。

工場員ってのが多かったかな。

リペアマン募集なんてのは見たことなかった気がする。


もしこういう楽器関係で仕事をしたいと考えて専門学校に入ろうと考えているなら専門学校は専門分野を教える学校。ぐらいに思っといたほうがいいとおもいます。でもチャンスはないわけではない!

玉砕覚悟で挑むならこれだけはアドバイスしたい!学費は自分で払いなさい!親を楽器でなかせるもんじゃないよ!!



エレキベースからラジオが鳴った日

今まで楽器のリペアしててびっくりするような出来事ってのが結構いっぱいあったんだけど、 こういう話はお客さんのプライバシーとかそんながあってあんまり話したりできないのが残念ですよね。
そういう類いの中でなかなか自分の中でショッキングだった話があって、
これは自分の失敗談って訳じゃないんだけど…

あれは大変だったな…。

よくね、自分で出来ると思って配線とかいじっちゃう人っているんですよ。ハンダって結構難しいんですよね。でもこんな線の一本くらいなおせるんじゃないかってやっちゃう人が居て。
大抵一本の断線が二本になり三本になりわけわかんなくなっちゃってリペアにだすっていうよくあるパターンのやつです。
(最近ハンダコテ協会なんていうとこがやってるハンダ検定なる怪しいものをみつけた)
まあそれはいいとして、僕のところにもって来られるのはなかなかひどいのばかりだった。

そのベースも持ち込まれたときはまったく音鳴らなくて、中開けたら絶望的なぐちゃぐちゃっぷりで、もう無理なんじゃないかってくらいのあきらめムードで作業に取りかかったのをいまでも覚えてる。

必死の思いで時間かけて配線し直していざアンプにつなぐと弾いてもないのにボーカルつきで演奏が
はじまった。
最初、疲れで頭おかしくなったのかなとかいろいろ考えながらどっかで聞いたことあるその曲をただただ聴いててハっ!と気がついた。

『最後にお聴きいただいたこの曲は…。』

これはロックの神様がベースに降りて来たんでもぼくの頭がおかしくなったんでもない!!

ラジオを受信してやがる!!!しかも高音質で!!

頭が真っ白になったなぁ。

あれは本当にナシだった。それからまた一からやり直してなんとか演奏できるようにはなったんだけど、、めちゃくちゃなハンダと配線のせいで一番大事な電子パーツがショートして奇跡の壊れかたを
してたってのが後の検証でわかりました。

僕のミスじゃなかったことがわかってホッとしたなぁ〜

電池入れるタイプはうかつに触らないほうがいい。大惨事になる前にリペアにもっていきましょう!

余談で、専門学校時代、配線ミスって心臓の音が出るエフェクター作って一躍ヒーローになったやついたな笑

プレイヤーとリペアマン

ギターの修理ってのはほんと様々で使ってる人の環境とか考え方にあわせてかえていかなきゃいけない。
僕に依頼してきてくれる人たちは現役でライブを月に何本もしてる人がほとんどで、
そういう人たちの楽器を一番みてきたから僕の修理ってのは例えるなら戦場の衛生兵、
もっというなら緊急着艦した戦闘機を応急処置してまた発進させる整備兵のようなことがすごく多かった。
やっぱりライブ活動なんかしてる人はそれなりに楽器の使用頻度というか、ライブっていう万全じゃないといけない場面が多いわけだから、
そんなときに楽器がトラブルと大変な訳で、小規模ながら僕はそんな人たちの駆け込み寺のようなものになっていたんだとおもいます。
なんとかしてほしいって頼まれてなんとか出来たときの感動はそりゃあリペアマン冥利に尽きるわけなんですが、そういう風にいかないことも多々あって…。
取り寄せないと無いようなパーツが壊れてたり、日にちがかかる修理だったり、
そりゃあ心痛めました。
応急処置でなんとか凌いだり、なんとかできるやつには全力で向き合ってなんとかがんばってました。


だいたいがメンテ不足の故障が多かったかな。こんな放ったらかしにしてなかったらこんなことにはならんかったのに!みたいな故障が。
もっと大事にしたらいいのにとは思うんですけどきっとプレイヤーは演奏するってことが楽器を大事にするってことなんだろうな。
プレイヤーがいて楽器があって修理するひとが存在するわけだしね。
そうなってくるとやっぱりリペア、メンテナンスはすごく大事なんですよ。
でも、修理するところ、修理できる人が近くにいるってのは意外に少ないと思う。
大型楽器屋さんに修理に出すのはまあいいとはおもうけど、調整はどうなんだろう?自分の好みのセッティングを受付の人に伝えるだけでうまい具合になるんだろうか?
ぼくはそういうのはかなり不安におもってて、音楽にはすごくこだわってる癖に、調整はどこの誰だかわかんない人にやってもらうっていうのはいかがなものだろう?
調整ってのは本当にシビアで、ギターのセッティングは意外にバリエーションが多い。
直接話しながらいろいろ試していける環境って少ないんだろうな。

リペアマンって人種がそんないないってのもあるんだろうけど、決定的に言えるのがリペアに出すとか調整にだすってことがかなり敷居の高いことになってるのも問題なんだろうなとおもいます。
値段も高いしね。なんとかならんもんでしょうか?
この値段ってのも修理によって様々で、なんでこんなしょうもないもんの交換でそんな値段!?みたいなのがありますよね。
新しいの買ったほうが安いとかそんなこともあるでしょう。
でもわかってほしい。それだけリスクのあることをしてるかその金額に見合うほどの労力がかかってることを!

リペアマンとプレイヤーはやっぱり繋がってたほうがいいとおもう。その一番ベストな関係を構築するのってじつはまだまだできてないと思う。







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